TECH未来活用力コンテスト11審査結果発表!

審査員総評

  • 社会の中の「困った」はどこかと皆さんがよく考えて,健闘された様子がとても分かる作品たちで,どれも素晴らしかったです。同時に,これが実用化されたら…と同時にわくわくもしながら選ばせていただきました。(アマゾンデータサービスジャパン合同会社)

 

  • 生活を豊かにする『しかけ』をつくろう」のテーマの下で,たくさんの試行錯誤に基づいた工夫をしていることがわかる作品でした。説明する動画もユニークにまとめられていましたが,『しかけ』のところの説明が少ないものもありました。皆さんが考えた作品の動作や機能だけではなく,工夫して考えた仕組みの部分も明確に説明できたらすばらしいですね。(広島大学大学院 准教授 谷田親彦)

 

  • スタンダード部門は楽しい作品が多くありました。どのような問題をどんな方法で解決しようか,というバリエーションも豊富になってきており,技術で目指す問題を見いだして課題を設定する力が皆さんに育成されてきているといううれしさを感じるコンテストでした。アドバンス部門は,どれも甲乙つけがたく,アイデア,難しい動作への挑戦などがとても高いレベルであったと思います。コンテストですので数を絞らなければいけない,そのことに悩みを覚えるほどで,出場した皆さん全員に○○賞という賞をあげたいと思いました。ぜひ皆さんには,この先もモノをつくること,テクノロジーと関わっていくことを続けてほしいと願っています。(文部科学省 教科調査官 渡邊茂一)

 

  • 多くの作品が身近な問題や社会的な問題を自分ごととして捉え,問題点を焦点化した課題設定が行われていました。課題解決に向けて,テック未来の特性を生かした機構の工夫が随所にみられ,技術のしくみを工夫していました。学習指導要領改訂の要点に示されている,他の内容の技術も含めた「統合的な問題の解決」の学びが,今回はアドバンス部門でセンサー制御や通信システムで機構を動かすことで実現しています。また,スタンダード部門の作品も機構モデルをベースにして,「統合的な問題の解決」につながるものになっています。先生方にも,内容C『エネルギー変換の技術」から,統合的な問題に着眼できる授業の指導計画を期待しております。(全日本中学校技術・家庭科研究会 顧問/東京学芸大こども未来研究所(教育支援フェロー)三浦 登)

 

  • 今年の作品も,中学生ならではの視点で,生活の問題点や世の中の課題を解決したいという気持ちが込められている作品ばかりでした。AIナレーションでの解説や,縦長画角のプレゼン動画など,提案方法にも自分たちの等身大の知識を駆使していこうとするところに,みなさんの好奇心や時代性も感じることができました。今回から2部門にわかれた応募方法でしたが,スタンダード部門もアドバンスド部門も皆さんのアイデアが大変おもしろく,部門間で差を感じず負けず劣らずで面白い作品ばかりでした。これもひとえに,現場の先生方の丁寧なご指導によるところと思います。ぜひ,今回のコンテストに提出して終わりではなく,長く作品作りを継続して,「真に解決した!」と思えるまで,試行錯誤を続けていただきたいと思います。((株)おもちゃ王国 代表取締役 髙谷昌宏)

 

  • 今年もたくさんの活用力コンテストへの応募をありがとうございました。皆さん,TECH未来のパーツを使って,いろいろな作品を構想したり,作ったりしている時はどうでしたか?ドキドキ,ワクワクしましたか? 今回の入選した作品は,TECH未来の部品をうまく利用して,しっかりと問題を解決できる機構を構想,製作していました。このような力は,今,日本のこどもたちの学びに特に欠けている新たな価値を創り出すために具体化する力であり,自分の頭の中で考えたイメージを人々が見えるように「形にする力」です。このような力はプロトタイピングの力と呼ばれています。是非,技術分野の学びで獲得するプロトタイピングの力(実践を通して具体的な形にする力)をこれからも発揮して下さい。(東京学芸大学大学院 教授/NPO法人東京学芸大こども未来研究所 理事長 大谷忠)

 

<スタンダード部門>

グランプリ

No.1「私が来た!」

愛知県 愛知教育大学附属名古屋中学校 グループ名:ヤルルヤリエソ

【製品モデルの説明】

「私が来た!」は災害の被災地へ物資をより早く届けるための車です。かさ歯車を取り入れて、前に進む動きと左右に瓦礫をどかす動きを同時にこなすことで時間を短縮し、より早く瓦礫を排除することができるようにしました。作動する部分の歯車をゴム付きにすることで外側にものをどかす力を強くしました。回転のスピ一ドを速くするために歯車の組み合わせを工夫し、一番速い回転にしました。

審査員講評

  • ・一つの動力で,車も動かし,清掃タイヤ部分も動かすというのが面白いと思いました。
    ・バランスのとりかたも含め,馬力の上げ方など,エネルギーを変換していく際の歯車についての理解が良くできていると思いました。
    ・路面清掃車の仕組みに似ていると思いましたが,清掃車はこの作品のプーリーとは逆回りで車の中へ中へゴミを集めていくのに対し,この車は,「道路に散ってしまったがれき」を想定して,道路の脇に,いったん避ける,というための車であると理解しました。災害現場にはまず,いろいろな車両を,必要なところまで動かす必要があり,道路を作り直す,という意味で,この発想は優れていると思いましたし,このような発想の災害車両はいままでにないように思います。地震など災害が多くなっている昨今の時代に必要な発想かもしれません。今回ブロックで組まれた機工に関しても,プーリーにゴム製のリングをはめたことで,瓦礫に見立てたブロックを的確に避けていて,工夫を感じました。(高谷)
  • 社会問題に着目し,災害地で移動できる課題設定を解決するモデルに仕上がっています。前に進む動きと左右に瓦礫をどかす動きを一つのモーターで同時に行う機能を機構を工夫することで可能にしています。特に,瓦礫をどかす機能では,回転の方向や回転力を最適化しているため,実用化ができるモデルに仕上がっています。(三浦)
  • 一つの動力から瓦礫の排除と走行の機能を持たせているところが良かったです。排除する瓦礫が勢いよく飛んでいかないような,回転数の調整や部品の工夫を考えてみましょう。(谷田)
  • 災害時を想定した着眼点が良い。移動するのがホイールでなくキャタピラならさらに良い。(AWS)

 

準グランプリ

No.2「万能コップクリーナー」

国立 広島大学附属福山中学校 グループ名:2C1班

【製品モデルの説明】

動画内で説明

審査員講評

  • コップの回転と往復スライダクランク機構の縦の動きによって,コップをきれいに拭くことができそうです。コップを取り換えて,たくさんのコップを効率良く拭くことができる工夫を考えてみましょう。(谷田)
  • 最近,台所で洗いものをする私としては本当に欲しくなってしまいました。自動食器洗い機は,コップの底とかものがこびりついたままの時があるんですよね。でも自動でやってほしい,そんなところがとても刺さりました。1つの回転で2つの機能(コップを回すのとコップを洗うたわしが動く)を実現しているのも良かったです。(渡邊)
  • ・傘歯車や往復スライダクランクの利用など,内周を回りながらかつ縦方向にも動きながら拭く,という複合的な動きを,よく考えて再現できていると思います。
    ・ぬかりなくコップの内も外も拭いているのが賢いです。
    ・例えばこれを応用して,毎日衛生の気になる「水筒の中」を,よく洗える機構だとかが,考えられるのではないかと思いました。(高谷)
  • これまで,入れ物に入っている料理や飲み物を混ぜる機構を作った作品はよくありましたが,入れ物自身をきれいにする作品はあまり見たことがありませんでした。今回,入れ物をきれいにするために入れ物自身と混ぜるマドラーの両方を動かす機構をつくっている点に工夫が見られます。大変素晴らしい作品です。(大谷)

 

AWS特別賞

No.3「Caterpillar Wheelchair」

島根県 島根大学教育学部附属義務教育学校 グループ名:8年1組G班

【製品モデルの説明】

車椅子に乗ったまま段差を上れない問題、車椅子で階段を上れるようにする目的
(1)二段歯車、
(2)無駄なものを省き階段を上ることに特化
(3)キャタピラ
(4)体の不自由な人(年代問わず)
段差を上る関係上椅子の角度や向きがよろしい状態で無くなる

審査員講評

  • 実際に車椅子を使用している人にとって,このような形のものが実用化出来たら,移動の可能性がさらに広がるため,素晴らしいアイディア。椅子部分がフリーで水平をキープできていればなお良い。(AWS)
  • 自分とは違う人の,社会の課題解決に取り組んでいることはもちろんですが,現実世界での動きが想像できる,本当に実現できそうな,そんな提案であったことが良かったです。ちゃんと登る,走るようにするためには試行錯誤を重ねたのではないでしょうか。今後,人のモデルを載せて重心が変わった時にどうなるのか,など引き続き改良を続けてください。(渡邊)
  • 車椅子に乗ったまま段差を登れない問題を解決するために,キャタピラを使って,うまく動力の変換を行っている点に工夫が見られます。キャタピラの動きもスムーズで,動画を通して,段差をスムーズに登る様子がよくわかりました。これなら,車いすに乗ったまま,どんなところでも移動できるのではと感心しました。(大谷)

 

<アドバンスド部門>

グランプリ/AWS特別賞

No.4「うぃんどうあけるくん」

茨城県 取手市立戸頭中学校 グループ名:1組8班

【製品モデルの説明】

①マイクロビットを2台通信して
コントローラ側のボタンを押すと扉の開閉ができるようになる

②力が大きくなるように赤の歯車:黄色の歯車と青の歯車:黄色の歯車に動力伝達をした
→6倍になる

③装置に糸をつなげて引っ張ることで,ローラが扉を動かすための力が伝わるようにした

審査員講評

  • 高いところになる窓の開閉についての問題意識が良かったです。温度や二酸化炭素量など,ある条件になると自動に開閉するような機能を持たせるとより良くなると思います。(谷田)
  • 日常の問題に着目し,室内環境を安全な作業で実現できるモデルに仕上がっています。実際の窓の開閉ができる機器として完成しているので,設計・製作共に優れた作品として評価しています。この作品は,高齢者や障害者の方々の生活を豊かにすると感じています。更に,このシステムを窓の開閉以外の課題解決に応用ができると感じています。(三浦)
  • 実際に窓が開けられてしまう,という実現度合い,製作品のパワフルさに感動しました。これからちょうど暑くなるので(審査は6月)座ったままピッと命令して,窓の開け閉め,してみたいです。学校で実際に使ってみた様子や,電池やローラーの交換,清掃などがどのくらいの頻度なのか,なども知りたい,そう考えたくなるリアルさをたたえます。(渡邊)
  • ・高い位置にある窓の開閉が難しい,という誰もが共感する課題なのでわかりやすい
    ・平面図,立面図,側面図で説明されているので,機構の仕組みの理解もしやすい
    ・機工を使い手が直接触って操作するのではなく,コントロールボックスの2台使いで,リモコンになっているところも,便利グッズとして大変優れていて素晴らしい
    ・動かしたいもののほうに機構を固定するというちょっとした発想の転換もよいと思う
    ・開けるだけではなく,閉じることにも決着をしているところがよい(高谷)
  • 私も幼いころにカーテンやドアを開け閉めする機構を作ろうといろいろな作品を作ることを試みました。今回の作品は,移動するウインドウにTECH未来の装置を取り付け,プログラミングを利用してウインドウの開け閉めができるようにしています。本当に実際に使用できるようにしているので,構想を具体化する上で,とても評価が高い作品です。(大谷)

準グランプリ

No.5「自動ティッシュBOX

大阪府 大阪市立東我孫子中学校 グループ名:大阪市立東我孫子中学校  技術工作部Bチーム

【製品モデルの説明】

テック未来ベーシックとコントロールボックスを組み合わせて,手を差し出すと自動でティッシュを出してごみ箱を開く仕組みを考えました。手を差し出したことがわかるように,赤外線センサを使用しました。
マイクロビットからの信号をトランジスタで増幅して,発電モータを動かしています。
ティッシュはタイヤを回転させることで取り出す仕組みです。ごみ箱のフタは横に回転する事で開閉します。
ティッシュの取り出しの信号がうまく送れず,取り出しについては,スイッチをしようしました。

審査員講評

  • ティシュが滑らかに取り出されています。この自動ティシュBOXはどのような人に利用してもらいたいのか,問題意識を明確にするともっと工夫ができたかもしれませんね。(谷田)
  • ・赤外線センサで自動でゴミ箱が開くのが便利。
    ・一つのモデルで,ティッシュを1枚ずつ出すこと,ゴミ箱を開けること,2種の自動制御を組み込もうと考えて試行錯誤した点を評価したい。
    ・今後,ティッシュを出す機能も自動になるように開発をすすめて,いつか完成させてほしい。
    ・全ての機能が自動になったら,水道のそばに置いて,手を洗った後のペーパータオルの処理などに使用できるのではないか。(高谷)
  • 他の部分を触らずにティッシュが取れるため,感染症対策にも良い。(AWS)
  • 一人暮らしのお年寄りや忙しい職場や場所などで使用できるシステムとして,実用化が期待できると評価しました。センサー感知で自動的にティッシュが出てくるしくみは,完成度が高いと感じました。更に工夫して,ごみ箱の開閉を含めた完全な自動化まで工夫して欲しいと願っています。(三浦)
  • 自動でティッシュが取り出せて,さらに使用したティッシュをゴミ箱に捨てることができる一連のプロセスをしっかりと制作できている点がとてもよいです。特に,ティッシュを取り出す機構に関しては,マイクロビットからの信号をトランジスタで増幅して,発電モータを動かしている点も以前に技術科で学習していたトランジスタ回路の特性をうまく利用しています。(大谷)

 

〜その他評価が高かった作品のご紹介〜

No.6「アラーム逃走中」

国立 広島大学附属福山中学校 グループ名:2C10班

【製品モデルの説明】

この「アラーム逃走中」という作品は、朝アラームが鳴っても止めてすぐ寝てしまう人のために有効なアイテムで、アラームが鳴るとスマホが振動で車の台の上に落ちてその重さで内部のボタンが押されることで車がスマホを載せて走り去るという機能がついています。スマホが台の上に落ちたときに傷がついてしまわないようにクッションを置いたり、回路をうまく組み立てて、適切な速度になるように調節するなどの工夫を施しました。

審査員講評

  • スマホが逃げていく,という絵が最高でした!問題発見,課題設定のプロセスは,不都合をなくす,というどちらかというとネガティブな作業から始まるのですが,この製品の機能はそれを吹き飛ばすような楽しさに溢れていました。今後も,さらに面白いアイデアとその実現を目指してくれるとうれしく思います。(渡邊)
  • 身近な問題を発見して,課題設定して解決までの手順が整っています。スマホの振動エネルギーを使って,モデルが動作する工夫がよく,そのスマホへのダメージを取り除く配慮とスイッチングがよく設計されています。「迷走」なので,運搬する台車の動きを工夫すると更に実用化が期待できます。(三浦)

 

No.7「snowman」

国立 広島大学附属福山中学校 グループ名:2B8班

【製品モデルの説明】

動画内で説明

審査員講評

  • ・雪国に住んでいて,毎年雪かきをする人をターゲットに絞っていて,本コンテストに今まで無かったハッキリとしたターゲティングに可能性を感じた。
    ・機構の動きにフェーズがあり,同じ動きをし続けるだけでは無いところを評価したい。(高谷)
  • 屋根の上の雪かきという危険な作業に対してこのようなロボットがあると人の安全性が担保されるため,着眼点が良い。(AWS)
  • 高齢化(社会的な問題)による地域の課題に着目し,課題解決のモデルが提案され全体の形状も無駄がなく,全体の完成度も高い。特に,複数の動きを機構と電気回路で工夫しているので,将来的に全自動化が可能な設計になっています。今後,モデル全体が無線などで移動できるシステムにつなげ,危険な場所での作業の自動運転もでるになることを期待しています。(三浦)

No.8「パウ・パトロール」

東京都 青梅市立第一中学校 グループ名:パウ・パトロール(青梅一中)

【製品モデルの説明】 

動画内で説明

審査員講評

  • 2024問題解決のためにトラックドライバーのスケジュールを調べていることが良かったです。荷物が乗ると車が自動に走り出す工夫を考えてみましょう。(谷田)

No.9「デスククリーナー」

国立 広島大学附属福山中学校 グループ名:2C4班

【製品モデルの説明】

動画内で説明

審査員講評

  • 机の上をきれいにするマシーンはこれまでもいくつもありましたが,しっかりと机の上をぞうきんで掃除するために,うまくクランクの機構を使っている点が大変素晴らしいです。ぞうきんで机の上をきれいに掃除できるので,マシーンとしての精度が高い作品です。(大谷)

 

No.10「ペンプロッター

大阪府 大阪市立東我孫子中学校  技術工作部Aチーム

【製品モデルの説明】

テック未来ベーシックとコントロールボックスを組み合わせて,直線的な図形をプロットできる仕組みを考えました。ペンを前後左右に移動させるために,ベルトとプーリを使用しました。マイクロビットからの信号をトランジスタで増幅して,発電モータを動かしています。マイクロビットからの命令は,モータのON・OFF命令ではなく,LEDのON・OFF命令を使用しています。そのため,前後や左右の動きの切り替えには,モータの正転・逆転回路を作成しました。ペンをうまく固定することや,力がきちんと伝わるように軸をまっすぐにすることに苦労しました。
 今回のプログラムでは,マイクロビットのAボタン・Bボタンで切り替えを行っていますが,今後は図形を関数化して呼び出せるようにしたいと考えています。

審査員講評

想定上の動きと,実際の機械の動作にはきっとずれがあって,その調整や実現が,相当難しかったのではないか,と想像させる製作品でした。ほかにどんな図形が書けるのでしょうか。その場合はどんな命令方法なのでしょうか。ペンをもっとしっかり固定するにはどうしたらいいかな。そんなことを開発者と一緒に考えてみたくなりました。素晴らしいです。(渡邊)


 

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投稿者: TECH未来事務局