東京都「企業等と連携したプログラミング教育の推進」事業での実践が行われました。
2020年の小学校におけるプログラミング教育の必修化に向けて、東京都では「企業等と連携したプログラミング教育の推進」事業を行っています。 この事業では、7社の企業・NPO・一般社団法人と東京都の情報教育推進校に指定されている学校が連携してプログラミング教育の実践を行っています。
NPO法人東京学芸大こども未来研究所(以下、本研究所)は、STEM教育メソッドの開発の一環としてワオ・コーポレーションと共同研究を進めていた、民間教育機関でのSTEM教室の教材を発展させ、小学校での『プログラミング教育に特化した小学校向けSTEM教育コース』と題して教材を提案しました。
教材の内容は身近な交通システムの一つである「信号機」をテーマに、理科や算数、社会で学習した内容を活用し、自分たちのまちをより安全・安心にするためのオリジナルの信号機を作成しようというものです。
本研究所はこの事業の採択を受け、ICT教育やキャリア教育などで有名な杉並区立天沼小学校と連携を結びました。 本事業は6月からはじまり、天沼小学校と本研究所間で何度も打ち合わせを行い、11月に6回の授業実践をしていただきました。各授業は次のような展開でした。
第1回の授業では信号機のはたらきについて考え、信号機がプログラミングで動いていることを知りました。 その後、Gigoを利用した、「青点灯 → 青消灯 → 赤点灯 → 赤消灯」のプログラミングの練習問題にチャレンジしました。 天沼小学校ではこれまでプログラミング教育にも力を入れて取り組まれておられ、Scratchにも親しんでいたこともあり、スムーズにプログラミングをすることができていました。
第2回の授業では信号機に関係のある教科について考えました。 コンピュータが動くには2進法が関係していることや、LEDを点灯させるためには電気回路が関係していること、信号機を設置することによって交通事故を防いだり、交通整理をしたり、環境への配慮につながることを学習しました。 そして、天沼小学校区にある信号機を班に分かれて再現を行いました。 再現を行ったところ、それぞれの信号機の点灯時間が異なっていることに気づき、児童たちはどうして信号機の点灯時間が異なるのかを考えることができました。
第3回の授業では「天沼地域の信号機を最適化しよう」を学習のめあてとし、「どこの信号機を改善する必要があるのか」「どうして信号機をつくる必要があるのか」「どんな人のために信号機を最適化する必要があるのか」を考えながら、信号機をプログラミングしていました。 児童が考えた信号機の例は
などがありました。
第4回の授業ではオリジナルの信号機を完成させることと、発表するための資料の作成を行いました。 発表資料はパワーポイントを利用して作成していました。この時に、国語で学習したことを振り返らせ、構成(信号機の場所・その場所の現状と問題点・信号機の内容・工夫点)を考えさせていました。
第5・6回の授業ではオリジナルの信号機を発表し、よりよい天沼地域について考える活動を行いました。 オリジナルの信号機を作るにあたって、いろいろな人の立場を考えたコメントがされていました。
事業内では6回の実践の予定でしたが、先日行われた杉並区の全区立小中学校でのICT公開授業においても、本実践の続きを行っていただきました。 信号機の実践の続きとして、信号機を2台使った、交差点の実践を2回も行っていただきました。
第1回の実践ではこれまでの学習の振り返りを行った後、交差点の特徴を考えました。 車が衝突しないような工夫について考えることができました。 交差点の信号では、一つの信号が赤信号の間に、もう一つの信号は青信号と黄色信号が点灯します。 すなわち、「赤信号の時間≒青信号の点灯時間+黄色信号の点灯時間」となる必要があります。 また、2つの信号が同時に変化すると危険なため、2つの信号のどちらもが赤信号になるタイミングがあることも重要になります。 児童たちは2つの信号をどのように同期させるのか考えプログラミングをしていました。 「(信号の点灯が)同じようにならないといけない」ことや、「計算が大変だった」という感想を持っていました。
第2回の授業では交差点の点灯時間やタイミングについて考えた後に、「ギゴランドに必要な交差点の信号機をつくろう」という活動を行いました。 この活動では、先生が考えた条件にフィットした交差点の信号をプログラミングしました。
先生が提示した条件は
などがありました。
班の中で条件を満たす信号機はどんなものであるのかを考え、どうすればいいのかを考えながら、プログラミングを行いました。
今回は「信号機」を題材にプログラミングを活用してオリジナルの信号機を作るという活動に取り組んでいただきました。 信号機をプログラミングで作るだけではなく、どこに作るのか、なぜ作るのか、どんな人のために作るのかを考えることで、単にプログラミングを行うだけでなく、リアリティのあるプログラミングの授業の実践になっていたのではないかと思いました。
杉並区立天沼小学校 (関連サイトにリンクしています)
※本特集で紹介した小学校用プログラミング教材に関する問い合わせは、本サイトのお問い合わせよりお願いいたします。
(文:専門研究員 後藤田)